サイト・ビー by Basser
バスフィッシング全力投球!

IoTセンサー搭載スマートルアーに見る、釣りとテクノロジーの距離感

“ハイテク”はアングラーを豊かにするか?

サイト・ビー=写真と文
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 テクノロジーは日々進歩し釣りの世界もその恩恵を受けている。令和3年、ボディーにセンサーモジュールを搭載しアプリでデータ収集ができるハイテクルアーが誕生しようとしている。スマートルアー「モデルゼロ」の取材を通じてアングラーを豊かにするテクノロジーとは何か考えてみた。

スマートルアー「モデルゼロ」が見せる未来


 ボディーにセンサーを搭載しアプリと連携することで情報収集を可能にするルアーの開発を進めている人がいるのは、数年前から筆者も知っており、理系出身なこともあって興味をもっていた。だが多くのアングラーがルアーに求めるのは釣獲能力に直結する性能(より遠くまで飛ばせるとか、少ない移動距離できびきび動くとか)だから、正直なところ、ニーズがあるのかどうか疑問に思っていたのも事実。

 そのため、月日の中でだんだんと意識の片隅に追いやられてしまっていたのだが、この令和3年5月、完成間近のスマートルアーの体験会が栃木県の管理釣り場・キングフィッシャーで開催されているという情報が届いた。折しもこの開発のためのクラウドファンディングが目標額を達成したとのことで、このルアーに期待しているアングラーが少なくないことが証明されたタイミングであった。

01 取材陣を迎えてくれたスマートルアーCEOの岡村雄樹さん。大学で生物学を学んだ後、新聞記者に。北海道へ異動したことをきっかけに中学生時代以来の釣りを再開したが最初は全く魚が釣れず、水中のようすをデータ化して釣りに生かすアイデアを着想し同社を創業

08試投させてもらったスマートルアー「モデルゼロ」。まずはセンサーを搭載しやすいビッグベイトタイプから完成に近づいているが、スピナーベイトや餌木などにも搭載できないかと構想中とのこと

琵琶湖北湖の地形変化で食い上げさせるような場面や、ビッグベイトシーバスなどでも威力を発揮しそうなアクションだ

 スマートルアー「モデルゼロ」はボディー下部にセンサーモジュールが埋め込まれている。このモジュールで水温、水深、照度、そしてルアーの動きを検知している。収集されたデータは1キャストごとにグラフ化されアプリで可視化される仕組み。実際に使った時のようすはここから写真で紹介したい。

02 腹部にセンサーモジュールが埋め込まれた「モデルゼロ」。親指の先のボタンがスイッチ

03 センサーモジュールは初期プロトのころのものより小型化に成功しており、現在のプロトタイプはボディーとセンサーに間をスペーサーで埋めている(右)が、ボディー形状を最適化したモデル(左)の開発が進行中

04 センサーはキャストを1回ごとに判別し、データを収集する

05 アプリに送られてくるデータの例。横軸が時間経過で、縦軸が潜行深度。グラフ上の任意の場所に指を触れるとその時点の水深・水温が表示される

 将来的にはアプリ上で各時点の照度やルアーがどのようにアクションしたかも表示できるようになるという。現在はユーザーが役に立てやすいデータの見せ方を検討中とのこと。

 さて、このルアーの機能を私たちの釣りで活用するとなにができるようになるだろうか。

 まず思いつくのは、パイロットルアーとして各エリアの水温変化をチェックしながら流していくような場面。ルアーを使っていくなかで、表層の水温だけでなくルアーが潜ったその水深の水温もわかるというのは大きなメリットだろう。ゆくゆくはその水深の照度もアプリで見られるようになるというから、フォローで入れるルアーのカラーセレクトを考える際にも役立つはずだ。これらは現在釣り用に販売されているどんなアイテムも真似ができない。

 また、そのときどきのルアーのアクションも記録されているので、ヒットした瞬間どんなアクションをしていたかのデータを記録しておくことも可能。

 将来的には、世界から収集した釣果データを基に、どんな条件下でどんな釣りをすると釣れる確率が高まりそうか、ゴルフのキャディーのように釣り人にアドバイスするサービスを確立したい、と岡村さんは話していた。

■「モデルゼロ」のコンセプトやアクションなどさらなる詳細はこちら
smartLure Model Zero – ビッグデータで“釣りの秘密”を解き明かす世界初のIoTルアー

アングラーを豊かにする“ハイテク”の条件


 少しわき道に逸れるが、筆者は去年レンタルボートのバスフィッシング用にライブソナーを導入した。ライブソナーとは従来の魚群探知機と違い、水中で起こっていることをリアルタイムの動画で見せてくれる機器だ。妊婦さんのお腹をみる超音波エコー検査を水中に対して行なっているのを想像してもらえるだろうか。このライブソナーを購入してから、釣りとテクノロジーの関係について考える機会が増えた気がする。

筆者が使っているライブソナー。沈船の上を通り過ぎようとするレンギョの群れと群れずに泳いでいる小さめの魚が映っています

 自らの釣りにどこまでテクノロジーを取り入れていくのか。そのスタンスはひとりひとり異なる。バスフィッシングを例に挙げるなら、やはりトーナメント出場に楽しさを感じているアングラーには親和性が高い一方で、クラシカルなタックルを使うトップウォータースタイルを追求しているアングラーのなかには、距離を置きたいと感じている人もいることだろう。

 この種のテクノロジーは釣りの楽しみを増やしてくれるのか。それとも奪ってしまうのだろうか。

 ここで立ち止まって考えたいのは「釣りの楽しさの本質はどこにあるのか?」という命題だ。大自然の中で癒されたい、魚との駆け引きで興奮したい、釣った魚を美味しくいただきたい……など、大きな楽しさを感じる部分は人それぞれだが、どんな釣りにも共通する楽しさは、誰も答えを教えてくれないフィールドで自ら考え試行錯誤すること、ではないかと筆者は考えている。

 この考えを前提に、たとえば筆者自身の釣りを振り返ってみたとき、実はライブソナーを使い始めてから釣りはますます楽しくなっている。ディスプレイに映し出される情報が、いままで知り得なかった水中への気づきを与えてくれる。自分だけの経験値となったその気づきを、明日からの釣りにどう組み込んでいくか。それを考えるのがたまらなく楽しいのだ。

 だから釣りをパズルに例えたとき、パズルを自動で組み立ててくれるAIロボットではなく、そのパズルのピースを増やしてくれる方向性のテクノロジーこそがアングラーを豊かにしてくれるのではないだろうか。

 今回取材させてもらったスマートルアーもその方向を目指しているのではないかと感じたのだ。ここで紹介したスマートルアーのセンシング機能が、自分の釣りのどこで活躍してくれるのかを直感的にイメージできる人は少ないかもしれない。

 想像してみてほしいのは、いままで想像で語ることしかできなかった表層下の水温や照度などを、キャストしさえすれば知ることができるアドバンテージだ。そこには必ず新しい発見がある。その経験値を釣りに組み込めたとき、ほかの誰にも真似できない自分だけの方法論を得ることができるはずだ。

dsc_1793aセンサーモジュールのみをさまざまなリグにセットして使うといったテストも行なわれていた。たとえば他メーカーとのコラボで、既存ルアーにセンサーを搭載したモデルの選択肢がでてくると面白いかもしれない

07取材は栃木県大田原市の管理釣り場・アングラーズパーク キングフィッシャーにて

スマルア技研
screencapture-labs-smartlure-co-2021-05-04-vision-lure-color2-2021-06-02-17_08_15釣りのパズルのピースを増やしたいという人にはスマートルアー社が運営するサイト「スマルア技研」もおすすめ。学術論文をもとにバスの生態を解説する記事は要チェック。吉田幸二さんや欠塚実さんが寄稿した記事もあります

●問合せ
スマートルアー
https://smartlure.co/



2021/6/3

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