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小林明人のパワーフィネス :スピンキャスト×ネコリグによるカバー攻略

2019年JB TOP50七色貯水池戦。同船取材で記者が見た小林明人のパワーフィネスの正体とは

サイト・ビー=写真・文
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必然のスピンキャスト


 JB TOP50昇格以降、パワーフィネスによるカバー撃ちを武器に年間5位(2017年)、年間8位(2018年)と快進撃を続ける小林明人。その技術は、トップカテゴリーの他選手からも一目置かれている。

01 2019年七色戦では初日は3074gで10位、2日目は2734gで10位、最終日は1926gで12位とウエイトを積み重ね、最終成績は10位。しっかりと41ポイントを手にした

 小林のパワーフィネスを解説するにあたって、まず触れておかなければならないキーワードが「スピンキャストリール」である。小林は、トーナメントアングラーどころか一般のアングラーを含めてほとんど使用者がいないこのタイプのリールを主力として使っているのである。

 小林が使っているアンダースピン(スピニングリールと同様、ロッドの下側に装着するタイプのスピンキャストリール)は、トライアングルというブランドから発売されているもので、製造元は国産リールの老舗メーカーである五十鈴工業の高精度なもの。

04 05 競技初日に小林のボートデッキに並んでいたタックル。スピニングロッドにはすべてアンダースピンキャストリールのTU-01(トライアングル)がセットされている。パワーフィネス用のロッドはTDバトラーU.S.トレイル681MFSを使用。ラインはキャストアウェイ1.5号。ひとヒロ分のリーダーには3号(2日目以降は3.5号)のフロロカーボンを使用。メインラインとの結束はSFノット

 スピンキャストと聞くと、子どもや初心者向けのリールというイメージを持つ人も多いだろうが、小林はスピンキャストリールとパワーフィネスの相性のよさを見抜いており、かねてよりPEラインを用いた釣りに多用していた。

 簡単にスピンキャストの構造とメリットを確認しておこう。ラインの放出システムはスピニングリールと同様。つまりベイトのようにスプールを回転させる必要がなくラインがフリーで放出されるため、軽量なルアーが投げやすく、バックラッシュなどのライントラブルが起きづらい。また、スピニングよりもラインにテンションがかかった状態でスプールに巻き取られるため、イトヨレによるライントラブルも少ない。

 そしてスピニングリールでキャストする際に必要な、ベールアームを起こしてラインを指に掛け、キャスト後は再びベールを返すという動作、つまりラインをフリーにしたりストップしたりする動作がレバーを使ってワンタッチでできるため、極めて手返しがよい。

 たとえばカバー直下でワームをシェイクしていて、一段下のレンジを探りたいとなった場合、スピニングであればベールを返してラインを出し、再びベールを戻すという動作が必要だが、スピンキャストであればこのレンジ調整のためのライン放出もレバーを引くだけで一瞬でできてしまう。パワーフィネスの使い手であれば、これがいかに大きなメリットかがわかるだろう。

06 操作中はこのようにグリップ。赤いレバーを引くだけでラインがフリー状態になり、瞬時にルアーをフリーフォールさせることができる

 ワンタッチでラインをフリーにできるという点ではベイトリールも同様だが、ベイトはスプールの抵抗がかかるため、手でラインを引き出さないかぎり完全なフリーフォール状態を作ることはできない。

 もちろん、スピンキャストリールにはデメリットもある。その代表的なものがギア比の低さだ。従来のスピンキャストリールのハンドル一回転あたりの巻き取り長は50cm前後のものが多く、ルアー回収の手返しとフッキング後の素早いランディングが必要になるカバー撃ちで使用するには不利になる側面もあった。しかし、今年から小林が使用している「TU-01」のギア比は5.8:1。ハンドル一回転あたりのイト巻き量は80cmを超えるハイギア仕様だ。

 小林に同船取材した記者の感想は、「パワーフィネスにこれほど適したリールはない」。そう思えるほどこのメソッドにマッチしたリールだった。

正確なキャストという壁


 カバー撃ちにおけるもっとも重要な技術のひとつに「キャストの正確さ」が挙げられる。

 その点、パワーフィネスでは、カバーの撃ちどころやルアーの種類、アクションの仕方を論ずる前に、「キャスト」という高い壁をクリアしなければならない。

 小林がパワーフィネスでカバーを撃つ際多用していたのがピッチングとサイドハンドキャスト、そしてフリッピング。とりわけピッチングでのプレゼンテーションが多く、キャスト全体の8割を占めた。そしてどのキャスト、ディスタンスにあっても、ねらったスポットに吸い込まれるようなキャストを決めていた。アンダーハンドで放たれるその美しい軌道は、それだけで小林が並の手練れでないことを記者にわからせた。

07 恐るべきピッチングの精度でネコリグをカバーに撃ちこんでいく。このキャスティング技術が小林のカバー攻略を特別なものにしていることは確かだ

 もしやったことがない方は、スピニングタックルでピッチングをしてみてほしい。ルアーを低弾道でねらったところに飛ばすことがどれだけ難しいかがわかるだろう。その難易度は、ベイトタックルのそれを大きく上回るはずだ。ちなみに、アンダースピンキャストリールの場合はスピニングリールのようにフェザリングによるラインの放出調整ができないため、レバーを引くことでブレーキを掛けるか、放出されるラインを左手(右手でキャストする場合)で直接掴むことでルアーにブレーキを掛ける。

 TOP50ほどの競技レベルとなれば、多くの選手がスピニングでの正確なキャストをこなすだろう。しかし、小林ほどの精度でカバーを撃つ選手を記者は見たことがない。小林はトップカテゴリーにあっても、キャストの正確さという点でカバーゲームにおけるアドバンテージを得ているのだ。

08 プラクティスでマーキングした有望なカバーをランガンする。今回の七色貯水池は、小林がメインとした中流域以外はほとんどカバーがなく、1ヵ所のカバーに強いプレッシャーがかかる状況だった

HP3Dワッキーのネコリグでカバーを貫く


 七色戦で小林がねらったのはウッドチップなどが波風で寄せられたカバー。それにレイダウンなどが絡んだものを重点的に探っていた。

 キャストしたルアーは「HP3Dワッキー」のネコリグのみ。小林自身が開発に携わったカバーネコリグ専用設計のソフトベイトである。
「テールが二股になっていることでヘッド部と合わせて3本のワームが束になっているように複雑に動きます。これまでずっとカバーネコではスワンプクローラーを使っていたのですが、今はこのワーム一択です。カラーは食わせ能力と視認性のバランスが取れた『みみずぅ』を使うことが多いです」

09 小林が3日間投げ倒したHP3Dワッキー5in(O.S.P)。カラーは「みみずぅ」がメイン。三つ又の構造でシェイク時に複雑なアクションと波動を生む。小林自身が開発に携わった自信作だ

10 セッティングには「ワームプロテクトチューブ」(G7)の5mmを使用。シンカーは「ネイルシンカーヘビーウエイト3.5~4.4g」(レイン)、フックは「ワーム318#1/0」(がまかつ)に熱圧縮チューブを半田ごてで溶かして接着し、ワームキーパーにしたものを使用

 これに3.5~4.4gのヘビーネイルシンカーを挿入し、ワームチューブと自作のワームキーパーを付けたフックでスナッグレスセッティングにすることで小林のカバーネコリグが完成する。

 七色戦では、ほとんどの場合、キャスト後のルアーは浮きゴミの上に乗っかるので、その場でロッドをシェイクし、ルアーを徐々にカバーにめり込ませて貫いていた。シンカーが挿入されたヘッド部さえ浮きゴミに刺さってしまえば、あとはボディーが引っ張られるようにカバーに滑り込んでいくので、9割ほどの確立でキャストで着地したスポットのカバーを貫いていた。

11 12 13 リグが浮きゴミの上に乗ったら、シェイクを加えてヘッド部をカバーにめり込ませる。さらにシェイクを加えるとボディー全体が引きずり込まれるようにカバーに侵入していく

ブレない釣りが魚を呼び込む


 カバーの質と撃ちどころに関しては、状況に合わせて柔軟な判断を下していた。

 朝イチは「どのレンジで食うか判断したい」と、あえて急深なバンクにできた水深のあるマットカバー+レイダウンを水面直下~5mレンジと刻み、時間をかけて探った。ワンキャストのシェイクに掛ける時間は平均して20秒と長め。キャスト数を増やすよりも、ワンポットで長く誘うことで広範囲からバスを引きつけて食わせるイメージだという。ラインが枝にもたれた状態でもネコリグを「ブルンブルン」と動かすため、シェイクは強めだ。

02 03 ファーストフィッシュは7:43にキャッチ。岩盤絡みのマットカバーのボトム(水深5m)で食ってきた。ネットがロッドに絡まり変形ランディング。「取材されることに慣れていないので、めっちゃ緊張してます(笑)」

「4gのシンカーが挿入されたネコリグを比較的ヘビーなタックルでシェイクするので、1日やるだけで腕がかなり消耗する釣りです。これを3日間やりきるとなると……(苦笑)」

 ボートポジションに関しては、「とくにこだわりはありません。遠くても近くても、正確に撃てればカバーのバスは食ってくれることが多いです。それよりも、接近した際にエレキを逆噴射して水流を当てないように注意しています」とのこと。また、常に船首を風上に向け、風に逆らうようにエレキを踏んでボートをステイさせることで、丁寧かつ長時間の誘いを可能にしていた。

 試合のプレッシャーとプリスポーン期という時期柄もあり、バイトは極めて浅かった。

「ハイシーズンであれば引きずり込んだり、もぐもぐするような深いバイトが出るんですが、今は1秒もしたらルアーを吐かれます。違和感を感じても『聞く』間すら与えられないので、即アワセしなければなりません」

 昼近くになり気温とともに水温が上がってくると、シャローにバスが差してくると読み、インサイドのナローバンクにできたカバーもチェック。だが、今試合は減水の影響で例年よりカバーが少なく、また時間と日を追うごとにカバーを攻める選手が増えたため、カバーの条件や撃ちどころを選ぶ以前に「選り好みせずに、人が入っていないカバーを奥から手前まで全部撃つしかない」という状況に追い込まれてしまった。

15 16 陽が出て時間が経つと、ナローバンクの浅いカバーにも魚が差し始めた

17 18 午後からはラインブレイクとバラシを連発。そのなかの2尾は明らかな1kgアップだった。「いつもはこんなミスないのに、なんでだ……」
これらのミスが響き、小林は初日を4尾で終えることになるが、「浅いところで食ってきたバスに対しても、深いところで食ってきたバスと同じくらい強いパワーでフッキングしてしまったからミスをしたんだと思います」と分析。2日目以降はリーダーを太くし、フッキングパワーを調整することでミスが減少。両日ともリミットメイクを達成した


 つまり、誤解を恐れずに言うと、小林が3日間を通して実践していたのは、「カバーをパワーフィネスで丁寧に誘い続けた」という、たったそれだけのことである。

 だが、極めて高い精度のキャストを繰り出し、カバーのレンジを刻みながら数十秒にもわたる我慢の誘いを続け、違和感程度しかないバイトを捉えるための集中力を切らさず、しかもそれを3日間に渡りやり通せる選手がどれだけいるだろうか。

 試合中、小林は「僕にはコレ(カバー撃ち)しかないんで……」「カバーを利用して食わせているというより、カバーに入っているバスしか僕には食わせられません」「カバー撃ちが一番好きですね」と、この釣りへ掛ける思いの強さを語っていた。精神的なことではあるが、このマインドを持っている時点で「ちょっとカバーを撃ってみよう」という選手との間には大きな差があると感じた。

19 試合中、ことあるごとに「自分にはカバー撃ちしかない」という旨の発言を繰り返していたほか、TOP50参戦を後押ししてくれているという並木敏成や、パワーフィネスの師である平川征利(愛称はデビル平川)への感謝の気持ちを口にした

 スピンキャストリールによるパワーフィネスという個性で輝きを放つ小林明人。次戦以降も、小林にしか獲れない魚をカバーから持ち帰ってくるに違いない。(おわり)

20 小林明人(こばやし・あきひと)
1973年10月27日生まれ。東京都在住

 記者が今年のJB TOP50メンバーのなかでもとくに注目していたのが小林明人。
 小林は今年でTOP50昇格3年目。参戦歴としては若手という位置付けになるが、年齢は今年で46歳と決して若くない。2003年からJBチャプター、2004年からマスターズに出場し始め、トーナメント歴は17年。TOP50に昇格するまでに14年を費やした苦労人は、昇格1年目にいきなり年間5位、2年目も年間8位と躍動した。しかも今年の開幕戦である七色貯水池戦を含めた3年間の計11戦で一度も予選落ち(参加約50人中30位以下)を喫していないという抜群の安定感を誇っている。
 今年の七色戦で準優勝を飾った山岡計文をして「コバさんは絶対に崩れない。どんな試合でも帳尻を合わせてくる強さがある」と評している。
 ことわっておくが、小林のホームフィールドは霞ヶ浦である。にもかかわらず、七色のようなジンクリアリザーバーであっても外すことがなく、昨年優勝を果たしたBasserオールスタークラシックの「THE WILDCARD」の舞台である旧吉野川に至ってはタイダルリバーである。つまり、どんなタイプのフィールドにも高いレベルで適応していると言える。


 
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