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JB TOP50遠賀川戦、沢村幸弘選手の強さに迫る :第1回(全4回)

フィールドの特性とスポットマネジメント

Basser編集部=写真と文
tobira
いよいよ今週末に迫った2017年JB TOP50開幕戦の舞台は福岡県・遠賀川。
このフィールドで開催される試合で突出した強さを見せているのが沢村幸弘選手だ。
今回は、Basserに掲載したJB TOP50のレポートから、遠賀川戦での沢村選手にフォーカスした内容をお届けする。
第1回と第2回は、沢村選手が優勝を収めた2013年6月のJB TOP50第2戦のウイニングパターンを紹介したい。


この記事はBasser2013年8月号に掲載したものを再編集しています。

初日、「よりによって」の選手が5㎏超え


 2013年6月7日~9日にかけて開催されたJB TOP50遠賀川戦。この試合初日のウエイインで沢村選手が会場を驚かせた。4㎏台すら誰もいないなか、唯一の5㎏超えを果たしたのだ。

 他選手にとって、その唯一が沢村であることは、非常に厄介な問題だった。仮にこれがほかの選手なら、「たまたまキッカーに恵まれただけだろう」や「タイミングが当たったのだろう」という見方も不可能ではない。しかし、沢村は2005年のJBクラシック遠賀川ラウンド(河口湖との2ラウンド制だった)を首位通過、2006年TOP 50遠賀川戦を6位、2008年TOP50遠賀川戦を4位、そして2010年JBジャパンオープンクラシックを優勝と、遠賀川戦を常に上位でフィニッシュしている。「何かが見えている」ことは間違いない選手だ。

 しかも、試合初日の沢村は競技時間を1時間以上残して会場付近に帰ってきていた。帰着は誰よりも早い14時30分(帰着受付は14時30分~15時)。


 半数以上の選手(32名)が「2尾以下」に終わり、リミットメイク成功はわずか6名というタフコンディション下で、沢村はいったいどんなパターンを組んでいるのだろうか……。

sawamura02 リミットメイク成功は60名中わずか6名。そして4㎏台すら誰もいないなか、ただひとり5㎏超えの沢村。「明日のことを考えると、やりすぎたかも」とひと言

sawamura00 帰着1時間前の午後2時、会場前に沢村が戻ってきた。サンバンデットを装着しているので表情はわからないが、悠々とした動作は「帰着までの時間調整」を思わせた

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遠賀川というフィールド


 ここで遠賀川というフィールドについて触れておきたい。ここで行なわれる試合では、選手たちは難しい試合運びを強いられる。その要因のひとつはトーナメントウォーターのストレートな地形だ。

 支流や中洲、ワンドのショアラインの地形変化がほぼないため、仮にエリアの上限から下限まで走行すれば、どの選手がどこで何を投げているかがすべて把握できてしまう。しかも、中~下流域に至っては、岸はすべて垂直護岸であり、スポットの把握がカギを握るオフショアの釣りがメインになる。


 そんな状況下で、選手はオフリミット期間(試合2週間前~3日前)以前の練習から直前プラクティス(試合前2日間)、そして本戦に至るまで、常に「他選手の目」を意識しながら釣りをしなければならない。たとえばプラクティス時にヒットシーンを目撃されたとする。そのエリアを後からサイドイメージ魚探で精査されれば、何をねらっているのかが丸裸になってしまう。試合本番でもスポットの管理やバッティング対策がキーになるのは間違いなかった。

遠賀川(おんががわ)

 福岡県筑豊地方の平野部を流れ、福岡県北部の響灘に注ぐ一級河川。トーナメントウォーターは遠賀川全体から見れば下流域にあたる新日鉄堰~御牧大橋で、全長約10㎞。この記事ではトーナメント区間上限の新日鉄堰から中間大橋を上流域、そこから遠賀川橋とJR鹿児島本線までを中流域、トーナメントウォーター下限の御牧大橋までを下流域と区別する。

 上流域は川幅100m前後で、堰やナチュラルバンク、斜め護岸、リップラップなど、ショアラインの変化が多い。シャローカバーゲームが可能だが、バスのアベレージサイズは500g前後と小さ目。

 対して中~下流域は川幅200~300mと広大で、延々と垂直護岸が続くのが特徴。橋脚と水門以外目視できる変化はほぼない。ただし、水中の地形変化や沈み物は非常に多い。遠賀川はかつて川幅の拡張工事が行なわれており、川の中央付近は旧河川跡になっている。旧護岸がハードボトムのブレイクになっており、リップラップや消波ブロックが存在する。またかつての河原には岩や流木などが残されている。中~下流域のねらいどころは「沖の地形変化や沈み物」と「橋脚」、「垂直護岸」で、基本的にはオフショアの釣りがメインになる。

map0 トーナメントウォーター上限の新日鉄堰は常に流れがあるスポット。シーズンを問わずフィーディングエリアになり得るが、とくに高水温期は爆発が期待できる

map1 上流域はアシやブッシュ、リップラップなどのシャローカバーが豊富

map3 筑豊本線橋脚。トーナメントエリアでもっとも川幅が狭い箇所に架かっているため強いカレントが発生しやすい

map5 中~下流域は川幅200~300mと非常に広い。オフショアは地形変化と沈み物が多数存在している

map6 中間大橋~御牧大橋(トーナメントウォーター下限)のショアラインは延々とこの景色

map7 遠賀川橋とJR鹿児島本線下。橋脚やロックハンプなどねらいどころが多いうえに、浅くなっているため強い流れが出やすい

徹底したスポットマネジメント


 初日のウエイイン後、沢村選手に同船取材を申し込んだ。

「OKだけど、明日は釣れない……、というか、釣らないよ。明日は決勝用のエリアに手をつけることなく凌いで、3日目にすべてを解放するプランを組んでるからね。明日が正念場。乗り越えれば勝ちが待ってる」

 そして2日目の朝。沢村選手は初日最終フライトだったため、2日目は1番フライト(2日目のフライト順は初日と逆になる)。今大会は近隣住民に配慮し、「スタート(7 時)から8時まで全域スロー走行、追い越し禁止」というレギュレーションが採用されていた。つまり、沢村選手が最初に入るエリアは続く選手にマル見えということだ。

 スタート後、沢村選手は2番フライト以降の選手を引き連れるように遠賀川を下流へ向かう。沢村選手は中間大橋下に入ると、手を挙げて後続のボートにエンジン停止を伝えた。ねらいはロックハンプ。誰もが知る大場所だ。

「ほかの選手は、鵜の目鷹の目で俺の動きを追ってくる。だからあえて外した場所に入る。俺が何をやっているかをわざわざ見せる必要はないからね」

 2番フライトの河辺選手が「ずいぶん手堅いところをやるんだね~」と声をかけ通り過ぎていく。「まぁ、河辺君には見透かされてるよね」と沢村選手。

 沢村選手はエレキを降ろすと、ハンプから10mほどのところにボートをステイさせ、1/24ozネコリグ(3.8inスイミーバレット)をピッチングで送り込む。ロッドを縦に捌き、ノーシェイクの極めてスローなズル引きでハードボトムを探っていく。ボートポジションの水深は1.9m、水温は24℃。

 ほぼすべての選手が通り過ぎるまでここを釣ったものの、バイトは得られなかった。フィッシングプレッシャーがかかっていない状態でモーニングバイトがねらえるスタート直後の貴重な時間を捨て、沢村選手は自分のスポットと釣りを隠すことを選んだのである。

 7時30分、上流域のナチュラルバンクへ移動。スタート地点から近いこのエリアは、スロー走行が解除される8時まで多くの選手で賑わっていた。沢村選手はアシが茂るショアラインにあるブッシュの沖5mにボートポジションをとりネコリグをキャスト。

 一投目、それは異様なキャストだった。サイドキャストでブッシュ方向にリグを飛ばしたはずが、着水地点はボートの逆側、つまり沢村選手の背中側にあたる沖だった。最初のキャスティングモーションはダミーで、直後にロッドの振り幅を最小限に抑えたピッチングでリグを飛ばしたのだ。傍目からは「サイドキャストでブッシュを撃ち、着底後にロッドワークを入れている」ようにしか見えないはずだ。記者があたりを見渡すと、数名の選手が振り返って沢村選手の動きを追っていた。おそらく「沢村はシャローカバー撃ちのパターンも持っている」とインプットされたはずだ。

 実際、このスポットで沢村選手がねらっていたのは水深3mまで落ちるブレイク。沢村選手がキャスティングモーションにまで気を遣ったのは、周囲の選手を混乱させるためではなく、このブレイクがプロダクティブであることを見破られないためだった。選手の密度が高いエリアだけに、ブレイクを釣る姿を見せてしまうと、後からねらわれる可能性が出てしまう。「この試合は自分のスポットを守ることが大事」と沢村選手。

 ここで、この試合を通じて沢村選手が釣ったエリアについて触れておきたい。沢村選手がねらっていたのは、トーナメントウォーター上限から下限までの全域に散らばるピンスポットだった。ボディーウォーター寄りでブレイクが近い「なるべく背が高い岩」がキーで、そのほか桟橋跡や流木、杭などもマークしていた。回復傾向にある、もしくは完全に回復したアフタースポーナーが寄り添う可能性が高いスポットだ。しかし、これはTOP 50選手であれば全員が考えるエリア条件。サイドイメージ魚探が普及した今、この条件を満たすピンスポットを割り出すことは決して難問ではない。

 その上で、沢村選手はねらうスポットにもうひとつ条件を付けた。それが「小さい」ことだ。マーキングした岩の多くは直径1m前後だった。ねらうスポットが小さければそれだけ気付く選手は減る。それでも多少のバッティングは避けられないが、たとえ後手に回ってもアプローチ次第で穴埋めは可能と沢村選手は踏んでいた。

 「小さい」ことのメリットはもうひとつある。それは、スローな釣りを行なっても時間を食われすぎないことだ。たとえば直径1mの岩に20投し、一投に1分かけたとしても所要時間は20分前後。仮にスローな釣りを展開しても、ラン&ガンが可能になり、それだけバスの時合や回遊とタイミングが合う確率を高めることができるのである。

day2-5 上流域のピンスポットを撃ちキャッチした2日目の1尾目。超ショートディスタンスで、直径1mほどの岩に10投以上ネコリグを送り込んだ結果


  
 
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2017/4/4

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