<img height="1" width="1" style="display:none" src="https://www.facebook.com/tr?id=170559842213036&amp;ev=PageView&amp;noscript=1">
編集部2017年6月26日

群馬県邑楽町教育委員会が踏み出した、外来魚対策の大きな一歩

Basser バス釣り

5月27日(土)、群馬県邑楽町の中野沼で「外来魚駆除大作戦」という名前の釣り大会が開催された。当日はタウン誌などの告知を見て集まった親子連れら155名が参加し、オオクチバスをはじめとする外来魚を釣りあげた。「駆除」と名付けられてはいるが、キャッチされたバスは殺処分されなかった。

殺処分からゾーニングへ。

サイト・ビー=写真と文

外来魚問題に新たな道筋


 5月27日(土)、群馬県邑楽町の中野沼で「外来魚駆除大作戦」という名前の釣り大会が開催された。当日はタウン誌などの告知を見て集まった親子連れら155名が参加し、オオクチバスをはじめとする外来魚を釣りあげた。「駆除」と名付けられてはいるが、キャッチされたバスは殺処分されなかった。

01 群馬県の人気バスレイク、多々良沼の西隣に位置する中野沼。普段は釣りが禁止されている西沼に親子連れなど155名がサオをだした

 2005年に、「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」が施行されて以降、釣ったバスをほかの水域に放流することはもちろん、生かしたまま持ち運んだり、飼育したりすることが禁止されている。しかし、この釣り大会を主催する邑楽町の教育委員会が、環境省からオオクチバスとブルーギルの飼養等許可を取得。これによって運搬と展示用の飼育が可能になった。また、この許可を受けたもの同士であれば、受け渡しも法律上問題なく行なえる。実際に、今回捕獲された外来魚の一部は群馬県内の管理釣り場に引き取られた。

天然記念物指定の中野沼での取り組み


 ここで、今年で5回目となる「外来魚駆除大作戦」が始まった経緯を説明したい。中野沼は、東沼と西沼が水路で繋がっており、農業用のため池として利用されている。ここにはマミズクラゲ、ナミウズムシ、ムネカクトビケラなど希少な生き物が生息していることから、1999年に邑楽町の天然記念物として指定され、西沼での釣りが禁止された。

 これをきっかけに「釣りを禁止にするだけでなく積極的に生態系を保全するための取り組みも行なうべきでは?」という意見が行政に寄せられるようになった。そこで近隣の学校への告知やタウン誌で参加者を募り、外来魚の駆除を目的とした釣り大会として始まったのが「外来魚駆除大作戦」なのである。

 子どもたちをはじめとする参加者からはおおむね好評だったものの、当初は殺処分を余儀なくされていたため、保護者たちから次のような意見が寄せられるようになった。

「たくさん釣れて子どもたちも喜んでいるが、釣った魚を殺してしまうのはかわいそうだ。なんとかならないか」

 主催者である教育委員会はこの意見を真摯に受け止め、殺さずに済む方法を模索した。その結果が環境省からの飼養等許可の取得なのである。

gun02 gun03 こうして参加者が心から釣りを楽しむことができた背景には行政と個人の並々ならぬ尽力があった

gun0amikura 環境省から飼養等許可を得るのは決して簡単なことではなかったと教育委員会の網倉雄二郎さん。イチから外来生物法を勉強し、必要な申請書類を何枚もそろえる必要があった。その都度環境省の担当者と意見を交換しながら手続きを進めていったという。「とても丁寧に対応していただけました」と網倉さん

gun0oyako 38㎝のバスをキャッチした須永さん親娘。娘の莉菜さんが学校でこの大会のチラシを見て「釣りをしてみたい」と参加を希望した。お父さんの浩行さんはバス釣りの経験あり

gun01 この日は南東の風が当たる北岸が好調だった

gun07 日本釣振興会もバックアップ。サオや仕掛けが大量に用意された

子どもたちに「殺処分」を押しつけないために


 今回の開催にこぎつけるまでにアングラーの立場から大きく貢献した人物がいる。日本釣振興会群馬県支部長であり、太田市で釣具店「オジーズ」を営む柏瀬巌さんだ。教育委員会が飼養等許可を得るにあたり、相談役として助言をしていた。実は柏瀬さんがこの大会に関わるようになったのは、まだ殺処分による駆除が行なわれていた4年前から。この大会で子どもたちへ外来魚と環境について教える講師役を買って出たのがきっかけだった。柏瀬さんはこう話す。

「外来魚を悪者と決めつけて駆除をするのは簡単なことですが、それを何の疑いもなく子どもたちが受け入れているのに違和感を覚えました。大人がいろいろな意見を踏まえて駆除を決めるのは仕方ない面もありますが、子どもたちに参加してもらうのであれば、自分で外来魚や環境問題について考えられるよう、正しい知識を身につけてもらいたいと思い、毎年講師役を務めています。そんななかで出てきた『殺したくない』という意見を聞いて教育委員会の皆さんが動いてくれたことに感動しています」

gun0kashiwase 子どもたちに外来魚について講義をする柏瀬巌さん。「子どもたちには世の中の難しい問題も自分で考える力をつけてほしい」と話す

 飼養等許可を得るのは決して簡単なことではなかったという。それに加えて捕獲したバスを殺処分しないことについて厳しい意見が寄せられるのではないかという懸念もスタッフの間で持ちあがった。それでも決行したのはなぜなのか。教育委員会の網倉雄二郎さんに聞いた。

「私どもは中野沼の生態系保全のためにこの活動をしているわけですが、駆除の対象となっている魚の命を救えるのであればそのほうがいいですし、その魚を飼育展示して子どもたちや町の皆さんに知識を深めてもらえればなおいいですよね。在来種にとっても外来種にとっても人間にとってもいいことしかないんです。教育の観点から見ても、今後も同じ形でやっていけたらいいと思っています」

gun04 在来魚はその場でリリース

gun06 駆除の対象となったのはオオクチバス、ブルーギル、カムルチー、ミシシッピアカミミガメの4種。教育委員会はブルーギルの飼養等許可も取得していたのだが、残念ながらバス以外の生き物は受け入れ先が見つからなかった。課題は多いが、バスだけでも殺さずに済んだことは大きな一歩といえる

gun05 今後への希望と6尾のバスをトラックに乗せて、群馬県邑楽町からお引っ越し

gun07 今回キャッチされたバスは6尾。取材陣が見守るなか管理釣り場のイケスに入れられた。「バスとブルーギルについては展示を前提として準備を進めていたのですが、まだ飼育環境が整っておらず、現状ではいたずらに弱らせてしまうと判断しました。そこで今回はバスを利用している管理釣り場に引き取ってもらう方向で調整しました。来年以降は設備を整えて展示できると思います」と網倉さん

  
 
 Basser2017年8月号の巻頭特集は「第9回 オカッパリAllstar Classic」。伊豫部健さん、内山幸也さん、木村建太さん、松下雅幸さん、水野浩聡さんが長良川、大江川、五三川を舞台に火花を散らします。バズベイト、フロッグなどの表層系ルアーにグッドサイズのバスが次々と飛び出し、勝負は驚愕のウエイトで結末を迎えます。
 競技経過のほかにも、各選手の勝負ルアーやテクニックの紹介、そしてフィールドのポイントマップなど見どころが満載です。
 JBTOP50では、第2戦を制した青木大介さんに3日間完全密着。サイトフィッシングの名手たちがしのぎを削った弥栄湖で、青木さんのチョウチンが他を圧倒した理由とは。





2017/06/26

おすすめ記事

記事検索

  • 検索フィールドが空なので、候補はありません。

月刊つり人 最新号

つり人 2020年5月号

列島をゆるがすコロナウイルス。けれども、日増しに暖かくなる春の日を、じっと家にこもって過ごすのはやっぱり体によくない。その点、手軽な海の釣りは、風も気持ちよく、大人も子どもも、思い切り深呼吸しながら時間を過ごせる。ウミタナゴ、メジナ、クロダイ、カレイ、アオリイカ、カサゴ……。元気な魚たちが泳ぐフィールドで、がんばろう、ニッポン! そのほか、3名手の渓流解禁レポート、里川で見つかる美味しい道草、みちのくタナゴ旅など旬の釣り満載でお届け。